第74章 心憂
「道中に危険な目には遭わなかったか?」
「はい。あの視線は―――――中央憲兵、なのでしょうか………。」
「さぁ、どうだろうな。変質者がこのままなにもしてこないことも、ないと睨んでいるんだが―――――。」
「緊張状態が続くのは、嫌なものですね。すみません、ご迷惑ばかりおかけして。」
「いや、気にするな。だがどうも君がいないと執務が滞る。夕食後からでいい、さっそく補佐業務をお願いしてもいいかな?」
「もちろんです!」
その後リンファと夕食をとっていると、サッシュさんやエミリー、ナターシャやオルオ、ペトラたちも集まって来て、とても楽しい夕食の時間を過ごした。
家族との夕食もとても良いけれど、仲間とわいわい賑やかにとる食事が、私は大好きだ。
執務の時間に、あの話を切り出した。
家のことを整理し、母が経営を担ってそれが軌道に乗るまで――――、どうしても長期間で家に戻らないといけない事を相談すると、エルヴィン団長は随分と考え込んだけれど、了承してくれた。
ただし、次の壁外調査を終えてからにして欲しいと相談を持ち掛けられた。
「――――長距離索敵陣形を少し見直して、再度その効果を測るための調査になる。医療班も君を筆頭に全員出すことになる。医療班に関しては間違いなく君がいることで機能があがる。頼めるか。」
「はい、わかりました。」
「――――2月頭に壁外調査を終えてからその後、君の長期離団を認めよう。期間はどうする?」
「2年―――――いえ、1年半で必ず戻れるようにします。」
「わかった。――――その間に、君が補佐をしてくれていたことに甘えていた私が、執務に忙殺されないように祈っててくれ。」
エルヴィン団長がはは、と笑う。
「あなたは私がいなくても大丈夫でしょう?なんの支障も、ないはずです。」
「――――それは、どうかな……。」
「………すぐですよ。それに――――エルヴィン団長が王都招集の時は、こっそり会いに行きます。」
「………そうだな。期待しているよ。」
エルヴィン団長がとても寂しそうな顔をするから、思わずその手にそっと手を重ねた。