第74章 心憂
一息、すぅっと息を吸い込んでからリヴァイ兵士長の執務室の扉をノックする。ぶっきらぼうな返答をもらって扉を開けると、机に向かって沢山の資料に目を通しながら、険しい顔をしている兵士長の姿がある。
「失礼します。………忙しそうですね………。」
「あ?見てわからねぇか。暇だ。」
そう言って、手に持っていた資料をぱさ、と机の上に放り投げた。
「………リヴァイ兵士長の冗談は、わかりにくくて判断に困るんです。」
くすっと笑うと、ほんの少しだけ兵士長の眉間の皺が和らいで―――――私を見た。
「約束通り、無傷で帰ったんだろうな?」
「はい。おかげさまで。お使いもちゃんとしてきましたよ。」
彼のほうに歩み寄りながら、紙袋の中からリヴァイ兵士長のお気に入りの茶葉を取り出す。
「これは、私からのお詫びの品で。こっちが―――――私の一番好きな茶葉です。これが2つ。」
「ご苦労だった。これで足りるか?」
リヴァイ兵士長は私のほうに銅貨を数枚差し出した。
「そんなにしませんよ。じゃあ、1枚だけ頂きます。」
「そうか。」
「――――私の一番好きな茶葉、というのが抽象的でとっても迷いました。ちゃんと使い道を聞いておけば良かったと思って。次からは、具体的に指示にしてくださいね?」
少し笑って嫌味を言うと、リヴァイ兵士長は渡したはずの紅茶の缶を私の胸に押し付けた。
「――――具体的に指示したが?」
「えっ。」