第74章 心憂
行きつけの茶葉専門店に入る。ミケさんは店の外で待ってくれていた。
「いらっしゃい……ああ、ナナちゃん!」
ふくよかで愛想のいい、白髪交じりの髪を三つ編みにした笑顔の素敵な女性は、私が小さい頃からここでたくさんの紅茶の茶葉を扱っている。
「こんにちは!」
「お父さんは残念だったね、聞いたわ。でも――――ナナちゃんが戻って来ているときで、安心したんでしょう……。あら、兵服ということはもう帰ってしまうのね。」
「お言葉、痛み入ります……。はい、看取れて本当に……良かったと思います。これから帰るので、お土産をと思って。いつものやつを1缶ください。それと――――……もう一つは……困ったな、どれにしよう。」
「なにかお探し?」
「私の一番好きな茶葉を買って来い……って言われたんですけど、悩みます。」
「………そうなの!そしたら……ナナちゃんが好きそうなやつを見繕ってみるわね。」
そういっておばさんは、数種類の茶葉を取り出し、香りを嗅がせてくれた。どれも個性はあるけれど、やっぱりどれも私好みに少し甘く芳醇な香りがして、とても悩んでしまう。
「わぁ、これ好きかも……!」
「うん、それはね出してみると少し渋みもあるから、ミルクを入れて焼き菓子なんかの甘い物と一緒に楽しむのが特におすすめよ。」
「甘い物………か………。」
私はその言葉を聞いて、手に持っていた茶葉を置いて、次の茶葉を手に取った。