第73章 夜這 ※
「――――ふふ。」
「……どうした?」
「今ならバレても―――――エルヴィンは気まずくないかも。」
「――――そうだな、どこからどう見ても俺が君に襲われているな。」
ひそひそと声を潜めて話すのも、なんだかとても新鮮で笑えてくる。目を合わせて、2人で小さく笑う。
エルヴィンの右手が私に向けて伸ばされ、誘われるようにその手に顔を寄せると、後頭部にその手を添えられて引き寄せられてまた唇を重ねた。
息継ぎの合間に、唇をずらしていく。頬から耳、そして首筋と―――――鎖骨、胸………。
なんて綺麗なんだろう。
私にはない分厚い筋肉と、無駄な脂肪のない腰回りがとても厭らしく見える。指でなぞり、舌を這わせながら、思い出したようにその肌を吸った。
「――――ん、ナナ……何をしてる……?」
「私もつけてみたい……赤い痕……。」
一生懸命唇を当ててその肌を吸ってみても、エルヴィンが私に散らすような鮮やかな痕は一向に残らない。
「…………難しい。」
「…………いくらでも練習すればいい。が、筋肉があると難しいんじゃないか。ベタだが――――首筋かな。」
「いいの?私のものだって印をつけても。」
「いいよ。君のものだ。この身体も心も全て。」
私がエルヴィンに与えられないその言葉をいとも簡単に与えてくれるエルヴィンが愛しくて、そして不謹慎にも嬉しかった。
エルヴィンのがっしりとした首筋から鎖骨に繋がる部分に唇を寄せて強く吸うと、うっすらと鬱血した跡を残すことが出来た。
「わ、できた。」
「――――悪くない心地だな。君に繋がれるのも。」
そう言ってエルヴィンは優しく笑って私の髪を撫でた。
私はまたエルヴィンの腹部から更に下に身体を降ろして、服の上からそっと触れてエルヴィンのその熱と質量を確かめた。
とても固くて、大きくなっている。
―――――興奮してくれているんだ。