第72章 再生
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「ねぇナナ。」
「ん?」
「――――リヴァイさんじゃなく、エルヴィンさんと生きるの?」
湯船に母と2人で向き合ってお湯に浸かっていると、母の口から核心をつく言葉が発された。
「…………うん。」
「そう。あなたはそれで、幸せなの?」
「…………うん。エルヴィンの側にいると、安心する。色んなものを見せてくれて、教えてくれて―――――私は少しだけ強くなれる。自分のこと――――少しずつ、認めてあげられる気がしてくるの。」
「……それはとても、素敵ね。」
母はそう言って微笑んだ。それ以上、何も言わなかった。
「………ねぇお母様………。」
「なに?」
「エルヴィンの事を愛しているのに、リヴァイさんのことも忘れられなくて……この胸の奥底で、ずっと愛し続けている私は――――――汚い………?」
小さくその質問を投げかけて、お湯に口をつけてぶくぶくと泡をたてる。母は少しだけ驚いた顔をしたけれど、とてもとても優しい顔で、答えた。
「人を愛することに汚いもなにもないと私は思うわ。」
「………でも、普通は……!」
「――――私もそうよ。ショウと再婚したけれど、リカルドの事を忘れたことなんてない。」
思いもよらない返答だった。
「―――――………。」
「――――どちらも、愛してるの。ただ――――想いの形と、表し方が違うだけ。」
「………ショウさんは、苦しく――――ないのかな……?お母様の心の奥に、お父様がまだいることが………。」
「どうかしら。聞いたことはないけど――――、きっと、リカルドとの過去がなければ今の私はいないから――――それも含めて、彼は私を愛してくれているんだと、思ってる。」
「……………。」