第72章 再生
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その日の夜はナナの実家でクロエさんも含めて夕食をとった。「13年ぶりだ」と笑うナナがとても嬉しそうな顔をしていて、俺も嬉しかった。
もちろん団欒という雰囲気ではまだなく、みんな口数は少ないものの――――その空気はとても優しくて悪くない心地だった。
ナナは怖いと言っていた問題に向き合って、立派に解決した。
彼女のその強さと、まっすぐさにまた惚れ直してしまう。
「ねえお母様、お風呂一緒に入ろう?」
「え?狭いでしょう?それにあなたもう大人なのよ。」
「やだ、一緒に入りたい。お願い。」
少女のように甘えるナナに、クロエさんもほだされたように微笑む。
「仕方ないわねぇ。髪、洗ってあげる。」
「やった!」
そう言って嬉しそうに連れだって行った。
「―――エルヴィン様、食後はコーヒーか紅茶かどちらになさいますか?」
「ああ、ありがとうございます。では紅茶を。」
ハルさんが笑顔で頷いたあと、ロイ君から意外な誘いを受けた。
「エルヴィンさん、ソファで一緒に飲みませんか、あなたともっと話してみたかったんです。」
「ああ、もちろん。」
場所を変えて、暖炉の前のソファに腰かける。
上質な茶葉を使っていることがすぐにわかるその香しい紅茶に口を付けると、ロイ君が口を開いた。
「――――エルヴィンさんが、姉さんを好きになったんですか?」
まるで思春期の少年そのままの質問をロイ君がするとも思っておらず、目を丸くした。こういうところもナナに似ている。歳のわりに大人びた事を言うのに、時折突拍子もない事を言って来る。
ふふ、と思わず小さな笑いが込み上げた。
「ああ、そうだよ。」
「――――あのチビ……じゃなくてリヴァイ兵士長から、奪い取ったってことですか?」
「そうなるね。」
「えっ、喧嘩にならないんですか?」
その純真すぎる問に、思わず噴き出した。