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【進撃の巨人】片翼のきみと

第72章 再生




その後、扉の向こうで待っててくれたエルヴィンを迎え入れ、改めて父に紹介をした。

意外だったのは、父があまり驚かなかったということだ。以前の夜会で挨拶を交わした調査兵団の団長が、まさか娘が将来を約束した人だと連れて来るとは思わず、さぞ驚くだろうと思っていたのに。



「――――やはり、そうか。」



父はふっと優しく笑った。その意味について、エルヴィンが問う。



「やはりというのは――――、あの夜会の日から、想定されていらっしゃったということですか?」

「………ああ。」

「お父様、それってどういうこと?」

「――――まぁ、いずれわかるよ。エルヴィン、苦労することになるぞ。ナナは――――難しい子だからな。」

「……なによ、厄介な子みたいに言って……。」



父の言い方に少し拗ねて見せる。



「ふふ、承知していますよ。そこがまた―――――可愛くて仕方ないんです。」

「――――夜会の時初めて会った時に思ったが、君は利口すぎる。大きな物を守るために本来の自分の気質と異なる仮面を創り上げて―――――しかもそれが常になりすぎて、いずれもうどれが本当の自分かが、わからなくなってくる。そうなると、失うものも大きい。」

「――――………。」

「……私が言うのもなんだが、仮面をかぶり過ぎて自分を見失わないことだ。私は結局――――家を発展させなければ……亡き父と母の期待に応えなければと……妄執に囚われ自分を見失い、目の前の家族を大切にできなかった。それが心底悔やまれる。クロエが去って、ナナが去って――――、ロイが昏い目をし始めた時に、ようやく気付いたんだ。“家”とはただの器で――――、その器を満たす愛する者達こそが大事だと。器ばかり豪勢に飾り立てて守ったところで、虚しいだけなんだと。」

「――――胸に刻みます。」



エルヴィンは小さく答えた。



「私の娘は難しいが、どんな小さく荒んだ器の中でも――――逆境の中でも、光輝ける子だ。だからどうか娘と向き合う時間を大切にしてくれ。――――最愛の娘だ。……宜しく、頼むよ。」

「――――承知しました。お任せください。」


父とエルヴィンが固く握手をする。父が私の幸せを願ってくれている事が嬉しくて、それを受け止めてくれるエルヴィンが愛おしくて、また沸き上がる涙を堪えた。

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