第72章 再生
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ロイ君も交えて朝食を終えた頃、門番からの連絡を受けたナナに連れられ、門までその人を迎えに行った。
遠目で見ただけでわかる。
ああ、あの時の女性に間違いない。
「――――お母様!」
ナナは大きな声で母を呼んで駆けていく。まるで子供のような無邪気さに、どれほど会いたかったか、どれほど母を慕っているのかがわかる。
「――――ナナ。」
娘の方に駆け寄り、しっかりと娘を抱き締めた時に揺れるその白銀の髪と、ナナよりも少し暗く黒に近い濃紺の瞳を持つその女性は、まるでナナに瓜二つだ。
愛おしそうに、慈しむように娘を抱き締める。
少しして、その目が俺を捉えた。
「――――あなたは………。」
「調査兵団で団長を務めている、エルヴィン・スミスと申します。――――13年前に一度、お会いしたことがあるんです。」
「ショウが、庇った―――――あの時の……?」
記憶を呼び起こすようにその大きな瞳を開いて、俺を見つめる。
「はい。尊敬する上官の命を救ってくださったこと、ようやく御礼を伝えることができました。心より感謝しています。ありがとうございます。」
「いいえそんな。出来る事をしたまでです。――――そう、そうですか……。団長に……なったのですね。」
「――――ショウさんに宜しくお伝え頂きたい。あなたに救ってもらった命を懸けて、人類の勝利に貢献します、と。」
「はい。必ず伝えます。きっと……とても喜ぶわ。」
柔らかく微笑むその姿は、ナナよりも温和でいながらもほんの少しの憂いを含んでいた。
「お父様を見舞ってくださるって、昨日から泊まって頂いているの。」
「そうなの。それはまたわざわざ……本当にありがとうございます。」
少しのやりとりをしている間も、ロイ君は屋敷から出て来なかった。
ナナが怖いと言っていたのは、ロイ君と母の確執か何かか――――、なんにせよ部外者が口を挟むことではない。
ただナナが一生懸命に家と向き合うその背中を支えるくらいは、俺にもできるだろう。