第72章 再生
翌日。
新しい一年が始まる朝は、エルヴィンの体温に包まれた温かで居心地の良い目覚めから始まった。
目を開けるとそこには髪と同じ金色の長い睫毛が伏せられていて、エルヴィンが結婚を望むのは――――もしかしたらこのなんでもない朝が当たり前になることに、少しの夢を見たいからなのかもしれないと思う。
じっとその顔を見つめていると、顎のあたりに少し伸びた髭に気付く。
なんで私にはないんだろう、不思議だな……と、ちくちくするその感触を確かめるように指でつついていると、途端にその指を掴まれた。
「――――新年早々、朝から悪戯か?」
「だって不思議で。私にはないから。」
悪戯がバレことに私が笑うと、エルヴィンも笑う。
束の間の休息だからか、団長という立場を置いてきているからか、兵舎を出てからのエルヴィンはいつもより柔らかい印象だ。
「そうだな、君はどこもかしこも滑らかで艶やかで美しくていい匂いがして――――、こんな綺麗なものが存在するのかといつも驚く。」
「――――お世辞がうますぎる。それも常套句?」
「意地悪だな。」
そう言ってエルヴィンは私の額にキスをした。
甘ったるいやりとりをしながら、ベッドから抜け出す。窓辺で朝日を浴びて、今日これから起こることを想起して、気持ちを正した。