第7章 調査兵団
「お言葉ですが、初対面の女性の髪に許可も取らずに触れていらっしゃることに、私は礼儀もご存じないのかと心配しておりますが?」
「…………!」
「人の価値観とは様々だと言うことでしょうか。勉強させていただき、ありがとうございます。今回、急に私の肩を不躾に掴まれたことの要件が、挨拶に対してのご指導なのでしたら理解しましたので、これで失礼致します。」
サッシュさんは呆然としていた。言い過ぎたかもしれない。と思いつつ、アルルのほうへ向き直ると、アルルはくくっと笑いをこらえていた。
「ナナ……!私、あなたのこと、好きだわ!」
「えっ!」
面と向かって好き、と言われたのも初めてで、私は顔が真っ赤になるのを感じた。
「………おい!!!」
その時、今度は髪の毛をグイッと掴まれ、無理やりサッシュさんの方へ向かされる。
「先輩に対してなめた口ききやがって………!医者だかなんだか知らねぇが、調子乗ってんじゃねぇぞ!」
「……………。」
私は冷ややかな目線で彼を見上げる。
「なんだよ、その目はよぉ………!」
「やめてください!サッシュさん!!」
今度こそ、とアルルが割って入る。それを見て、取り巻きの男たちもサッシュさんをなだめようと近づいてきた。
「サッシュ……そこまでの揉め事はまずいって……上官が来たら……。」
「うるせぇ!!この生意気な女には、教育が必要だから俺が教えてやってんだよ!黙ってろ!!」
「………光栄です。何を教えて頂けるのでしょう?」
私の言葉は、彼の怒りに油を注いだのだと理解した。
髪を掴んだ手は、ぐっと引き上げられた。