第71章 帰郷
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エルヴィンがその端正な顔で、頭を垂れて傅いて上目遣いで甘く囁いて来る。
私は顔を真っ赤にしてカップを置いて空いたもう片方の手で、顔を覆ってそっぽを向いた。
「――――無理……っ…!」
「何が無理だ。」
「だってお姫様なんて言われたことない……!エ、エルヴィンの色気にはちょっと慣れて、来たのに……っ、そんな………、そんな一言で、照れてる自分が……恥ずかしい…………!」
顔を隠していた片手もエルヴィンの大きな手でつかまれて、真っ赤に染まった顔を暴かれる。
その目をまっすぐ見つめて、エルヴィンはとても柔らかに笑った。
「――――可愛い。」
触れるだけのキス。それ以上を受け入れるのか拒否するのか、私の反応を確かめてる。
まさか自分の家でこんな展開になるなんて思ってなくて、心臓が飛び出そうなほど早く強く収縮を繰り返している。
そのせいでどうしても呼吸は荒くなり、はぁ、と息を継ぐと、エルヴィンの目が少し細められる。両手を抑えられたまま、ベッドに倒れ込んだ。
「――――新婚初夜みたいで、そそるな。」
「……新婚、でも……初夜……でも、ない…でしょ……!」
「雰囲気の話だ。そしてまたこんな脱がしやすい服を着てきて……危機感がなさすぎるな。」
元から大きく開いた襟元から簡単に肩を露出させられ、そのままネグリジェを引き下げられて胸も露わにされる。
「……ぁ…………。」
「ほら、どうしたいのか言わないと――――このままいつも通り俺に食べられてしまうぞ?」
エルヴィンが意地悪く胸の頂きを甘噛みするたびに、身体が震える。
「……抱き枕は、黙って抱かれるものでしょっ……?!……攻めてきちゃ、だめ……!」
あがる息の合間になんとか物申すと、エルヴィンがピタ、とその動きを止めて大きく笑った。
「はははっ、そうだな、それはその通りだ。じゃあ、姫の言う通りにしよう。――――どう、しようか?」