第71章 帰郷
「―――お邪魔しています。また会えて光栄です。」
「エルヴィン団長。どうぞ座っててください。姉さんの大事な客人なんですから。」
そう言ってエルヴィンに着席を促し、ロイもまた歩を進めて私の横に座った。それを見届けてエルヴィンも腰を落ち着ける。
「――――急に滞在させていただくことになって、恐縮です。」
「いえ、大歓迎です。」
「でも会えて良かった。どうしても直接御礼を言いたかった。疫病の蔓延をなんとか食い止められたのはあなたのおかげだとナナさんから聞いています。うちの兵士達も、大きく混乱をきたさずに守れた。ありがとう。」
ロイは珍しく年相応に、少し照れて嬉しそうな顔を見せた。
奪還作戦の時から一目置いていたエルヴィンに認められたことが、嬉しかったんだろう。エルヴィンはロイと上手くやってくれるんだろうなと、少しだけ先の未来を想像した。
「――――いえ。滅相もないです。それに、敬語を使わなくていいですよ。僕は随分年下だし、今は姉の大切な人で客人だ。もっとフランクに話してください。」
「そうだよエルヴィン。今は団長としてじゃなくていいよ。」
「―――そうか、ではお言葉に甘えて……ロイ君と呼ばせてもらおう。」
「ロイで良いです。義兄さん。」
「!!」
ロイの言葉に、エルヴィンも私も驚いた。どうしよう、と小さく2人で目を合わせると、ロイはきょとんとした顔で私たちに投げかけた。
「えっ、父に挨拶をしに来るくらいだから……婚約者なんでしょう?」
「えっと………えっとね………。」
私が口ごもると、ふっと笑いながらエルヴィンは私の頭を軽く撫でた。
「私たちはお互いに人類を救う事に心臓を捧げているから、結婚という形はとらないことにしたんだ。でも――――一生添い遂げるつもりはある。」
「………変わった愛の形ですね。」
「……そうかもしれないね。」