第71章 帰郷
また客間に戻ってエルヴィンと話をしていると、ロイが戻った。私は玄関までロイを迎えに行き、エルヴィンが来ていることを伝えた。
「――――え、あの人相の悪いチビじゃなくて?」
「リヴァイ兵士長ね……ロイ、言い方には本当に気を付けて。」
ロイもリヴァイさんに苦手意識を持っているし、そしてあのことをリヴァイさんが知っている以上、きっとロイのことも心の奥底で赦してないと思う。
もう2人が会うことも……そんなにないかもしれないけれど、よっぽどのことがないと、2人を会わせるのは危険だと察知した。
「兵士長から団長に鞍替えしたの?姉さん、やるね。」
「――――……そういう言い方はやめて………。」
「事実でしょ。」
「………そう、だけど………。」
ロイは涼やかな顔で意地の悪いことを言う。
「――――……エルヴィン団長は、知ってるの?僕が姉さんにどんな酷い事をしたか。」
「――――……知らない。」
「……そっか。」
「――――お願いだから、言わないで。言ったら――――許さない。」
ロイを恨みがましく睨むと、ロイはとても申し訳なさそうに目を逸らした。
「――――……言わないよ。」
「ありがとう。………それから、明日お母様が帰って来るのは知ってるよね?」
「――――………。」
ロイは途端に表情を凍らせて目線を落とした。
そんなに、会いたくないのか。
幼い頃のロイに、お母様の行動にデタラメな理由を植え付けた当時の周りの大人たちと―――――、もっと早くにこの呪縛から解いてあげることを考えなかった自分に心底腹が立つ。
「今会って話さないと、きっと絶対に後悔する。だから……私がちゃんとロイの側にいるから……会って話せる?」
「――――………わかった……。」
不本意そうに小さく承諾したロイの頭を、よしよしと撫でた。ロイは甘えるように、私をきゅ、と小さく抱きしめた。
「――――エルヴィン団長に挨拶に行くよ。」
「うん。ありがとう。」
エルヴィンのことは気に入っている様子で、挨拶を自分から申し出てくれた。
客間にロイを連れて戻ると、気付いたエルヴィンは立ち上がって笑顔を向けた。