第71章 帰郷
「いや、でも緊張するな。」
エルヴィンは小さく笑った。
「緊張?エルヴィンが?」
絶対緊張なんてしないでしょ、と思うと、私も思わず笑った。
「じゃあいつかエルヴィンの実家にも連れて行ってね。私もその時きっと、緊張するんだろうね。」
私の言葉に、エルヴィンは嬉しそうに目を伏せて微笑んだ。
「――――そうだな、いつか連れて行こう。母も喜ぶよ。」
エルヴィンの口から、お母様の話が出て来たことが嬉しかった。今まで一度もお母様の事を口に出したことがなかったから。どんな、人なんだろう。会ってみたいな。
そして、改めて私の母にエルヴィンを紹介できることも、とても嬉しい。
母の大事なショウさんが自身の右足と引き換えにが庇った人は――――、こんなにも調査兵団でその力を発揮して、その側に私を置いてくれているということを、伝えたい。
少し気が重かった帰省も、エルヴィンのおかげで少しだけ、気が楽になった。
「………ふふっ………。」
「どうした?」
「――――ううん、エルヴィンを持って行けないから香水を分けてもらったのに、まさかエルヴィンを持って行けるなんて、私は贅沢だなって。」
「そうだな。香水をつけた枕じゃなくてぜひ俺を抱いて眠ってくれたらいいよ。」
「――――そうする。」
私が笑うと、エルヴィンも優しく笑った。