第71章 帰郷
「ナナ、実家に戻る往路は俺が送っていくよ。」
「え?」
エルヴィンの申し出に驚いたのは、30日、皆さんが集まってくる少し前。まだ朝の青白い光が射す中、コーヒーを淹れて差し出した時だった。
「嬉しい、けど……でも……一年の内の数えるほどしかないせっかくのお休みなのに………。」
「変質者のことも解決していないからな、とても一人では行かせられない。迎えの時期はもう執務が始まっていて、悪いが俺は行けそうにないから誰か代役を立てるが―――――、送っていくついでに、挨拶だけでもさせてくれ。」
「……ありがとう。そしたら、明日の夜は私の家に泊まっていって。」
「ああ、お言葉に甘えよう。リカルドさんを見舞いたいし、何より―――――調査兵団団長としてじゃなく、一人の男としてナナの父上に挨拶をしておきたい。改めて、弟君にもね。2日に戻れたらいい。君のことを知れる機会だ、可能なら2泊させてもらって、2日に帰るよ。」
「わかった。あ、そうだそれにね、母も来るよ。」
「そうか、それは嬉しい。」
「うん。何年ぶりになる?」
「――――もう、13年ぶりかな。有り難い。あらためて、ショウさんを救ってくれた御礼を言える。」
「ショウさんも一緒に来られたらいいのにね。どうだろう……。」
「――――一緒に?」
「あぁそうか、言ってなかった?私の母とショウさんは、結婚して一緒に住んでるの。」
「本当に……?!」
「うん。会ったのはもう随分前だけど―――――2人とも、幸せそうだった。」
エルヴィンは昔自分を庇ってくれた上官に想いを馳せたのか―――――、その幸せな姿を想像したのか、柔らかく微笑んだ。
「――――そうか、良かった……。」
そう、この関係性も―――――私がエルヴィンと生きることを決めた一つの理由だ。
運命を信じそうになるほど、色んなところで繋がっている。