• テキストサイズ

【進撃の巨人】片翼のきみと

第70章 香




――――――――――――――――――――

次の日の早朝、甘ったるい気だるさの中、少しの肌寒さを覚えて目覚めた。いつも感じる体温がそこになくて、不安になって身体を起こして部屋を見回す。

まだ薄暗いのに、エルヴィンはどこに行ってしまったのだろう。シーツに包まった状態でそっと団長室に続く扉を開けると、そこにはもうすっかり団長の顔で仕事をし始めているエルヴィンがいた。

キィ、という扉の音にすぐに気づいたのか、エルヴィンは微笑んで私を見た。



「ああおはようナナ。起こしてしまったか?まだ寝てていいよ。」

「……もう、仕事してるの……?」

「ああ、みんなに手伝ってもらう前の準備をね。」



私は静かに歩み寄ると、エルヴィンの背中から、その首に腕を回して抱き締めて首筋に顔を埋めた。



「――――どうした、君が甘えてくるなんて。」

「こんなに早いなら、昨晩あんなにしちゃ駄目だったと思う……。身体は、大丈夫……?」



私の問いに、エルヴィンは驚いたような顔で少し私の方を振り返って笑った。



「それは俺のセリフだ。俺はなにも問題ない。身体を労わらないといけないのは君の方だ。――――大丈夫か?無理をさせただろう。」

「―――ううん、大丈夫。すぐ着替えて、手伝うね。」

「いいよ。寝てなさい。」

「やだ。」



エルヴィンから身体を離して、髪を高く束ねて働く意志を見せる。



「私があなたの役に立ちたいの。待ってて、すぐに来るから。最高に美味しいコーヒーも淹れて来るね。」

「そうか。ならお願いしよう。」



エルヴィンは嬉しそうに小さく笑った。

/ 3820ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp