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【進撃の巨人】片翼のきみと

第70章 香




―――――――――――――――――――


ナナの両手を壁に押し付けたまま、その可愛く濡れた唇を喰らう。

やがて息が上がりお互いを求めあうキスに変わると、両手の拘束を解いてその細い腰を両腕で強く抱いた。

ナナもまた、俺の首に両腕を回してその熱を受け入れ、同じ熱量を返してくる。



「………っ……は…ぁ………。」



息を継ぐ度に漏れる吐息すら、愛おしい。



「………可愛い、ナナ…………。」

「――――ねぇエルヴィン………。」

「――――ん……?」



初めて恋を知った少年のように胸の内に沸きあがる興奮を、なんとか大人の男であるという見栄で抑制してナナの呼びかけに答える。



「――――今夜はエルヴィンが望んだような、“甘ったるい初恋のような恋”をしてみよう?」



ナナは小さく悪戯に笑みながらそんな遊びをもちかけてきた。



「ああ。いいな、賛成だ――――――。」



俺が同意すると、ナナは俺の首に回していた腕を解いて、身体を離した。



「――――きっと……ドキドキして、こんな体を寄せることなんてできなくて――――……まず触れるとしたら、手、かな……。」



そう言って、ナナの左手の細い指が俺の右手の指先を遠慮がちに握った。それに応えるようにナナの手を握り返し、それぞれの指の間に割り入るように自分の指を差し入れて指を絡めていく。

少し恥ずかしそうに頬を染めるナナが可愛くて、左手をその頬に添えると、ナナは軽く目を閉じて俺の体温を感じているように掌に頬を寄せた。



やがて濃紺の瞳が少しずつ開いて視線が交わると、お互い吸い寄せられるようにして距離を縮め、掠るような、触れるだけのキスをした。

至近距離で目線を交わし、どちらからともなくまた唇を重ねる。何度も触れ合ううちに、小さく開かれた唇を啄み、食むようなキスに変わる。

たまらなく、胸が高鳴る。



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