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【進撃の巨人】片翼のきみと

第70章 香




幹部会は12月29日の年の瀬に行われた。翼の日の収益や今後の資金提供の交渉ができた相手先についてなど、いつもよりも少し明るい話題で会議は始まった。



「ナナ、翼の日にあの子来たんでしょ?アルレルト!!」

「はい、少しですが話を聞くことが出来ました。やはり間違いなさそうです。彼の祖父が、フリゲン・ハーレットだったんだと思います。外の世界の本は、祖父から託され―――――その祖父は、数年前に突如姿を消したそうです。」

「―――――またか……。」



リヴァイ兵士長が低く呟く。もううんざりだとでも、言いたげだった。



「アルミン・アルレルトの両親もまた祖父の影響を受けて外の世界の話を知っていたそうですが――――、奪還作戦に駆り出されて2名とも死亡したそうです………。」

「――――ここまで来ると、アルミンが無事生きていることがもう幸運だと思ってしまうね……。」



ハンジさんが辛そうに言った。同じ兵服を着て、心臓を捧げた仲間が―――――こうも容易く壁内で人間の命を奪っていることが、あまりに辛いのは私も同感だった。



「――――今はこれ以上外の世界のことを詮索するのは得策じゃない。いつ背後から刺されるかわからないからな。ほとぼりが冷める頃に―――――、日記に不自然に名前が記されたグリシャ・イエーガーの息子であるエレン・イェーガーと、そのアルミン・アルレルトがこの調査兵団に入ってくれれば、場が整い何かが動き始めるかもしれないな。」



エルヴィン団長が描いたその先に、幹部の皆さんも同意して頷いた。

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