第69章 葛藤
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翼の日の準備に追われている時から、君の様子が少し変だった。忙しいだけかと思っていたが、今思えば俺から目を逸らし、2人きりになることを避けていた。
――――君が俺に正面から向き合わない時は、決まってあいつの影が見え隠れする。
――――リヴァイ。
思ったより早く手に入ったと思った。
思いもよらずワーナー氏と俺の父に繋がりがあったことが解り、おそらくそれが君の背中を押したんだろう。
――――もとより俺自身を好いて、一緒に歩むことを決めたわけじゃない。“一緒に意志を継いで行ける相手”であり、“一緒にいるべきなんだろう”と俺を選んだ。
それでも良かったんだ。
日に日に君が見たこともない表情を見せてくれるようになり、俺に心を開いて―――――初めて君の意思で愛していると告げられた時の喜びは今でも忘れられない。
俺が教えたことに目を輝かせ、俺に見えていないものを教えてくれる。
君はもはや、生涯手放したくない存在になった。
それほどに愛しているから、わかってしまうんだ。
君がリヴァイと他の女性が会う機会を極端に嫌がっていることも。
役に立ちたいと言ったその相手が、俺だけじゃなく――――リヴァイに向けられていたことも。
昨日の夜は―――――1人静かにその胸の内で―――――リヴァイの誕生日を祝いたかったんだということも。
それが苦しいと俺が言ったら、君はどうする?
優しい君は、人を傷付けることを極端に罪に感じる君は、苦しむだろうか。苦しんでくれたらいい。
そうすればその罪悪感から、君はもっともっと俺だけを見てくれるだろう。
相手に不足はないと思ったが、リヴァイは想像以上の強敵だった。
その身体に指一本触れず、時間を共有することも、視線を絡めることもなく、こんなにもナナの心を掴んで離さないのはなんだ。
俺にない、何を持っている?
2人が育んだ地下街での日々と調査兵団での日々がいつか色褪せるまで、俺は待つしかないのか――――――?