第69章 葛藤
「――――あのね、実は私は――――この壁の外に別の世界があると信じているの。」
「!!」
3人の顔が、固まった。
「壁の外には海があって、その海の先には異国の文化が……知らない人たちがいるんだって。禁忌に触れる話だから大きな声では言えないけれど、アルミンが―――――、同じことを描いているって聞いたから。」
「――――はい!!そうです……!僕も、僕も同じように考えているんです……!そしていつかそれを―――――砂の大地を、氷の大地を見に行くんだって……!」
金髪にグレーがかかったブルーアイ。
エルヴィン団長に重なるその喜々とした表情で、アルミンは前のめりに話し出した。
「やっぱりそうなんだね……!ねぇ、私はこの外の世界のことを―――――ある老紳士から教わったんだけど、アルミンは……その話をどこで……?」
「――――祖父から本を託されました。両親もその祖父の影響が強くて―――……。」
言いかけて震えたアルミンの手をミカサがぎゅっと握った。
「両親は――――――ウォール・マリア奪還作戦に駆り出されて―――――死にました。祖父もまた―――――数年前に、突然行方不明になったまま……帰って、来ません。」
背筋が凍った。彼らの影を感じずにはいられなかった。
中央憲兵――――――彼らが、アルミンのお祖父様――――フリゲン・ハーレットを―――――消した。
「そう………だったの………。辛いことを―――――思い返させて、ごめんね……。」
「――――いえ………。」
「――――……俺たちは雪の吹き荒む開拓地で思った。―――――この外の世界のことを禁忌としたり、人を人とも思わない作戦を決行するイカれた王政を、いつか―――――淘汰してやる。」
幼かったエレンから発された言葉に心臓の奥がざわついた。
アルミンもミカサもまた――――同じように思ってる、そんな子供らしからぬ表情をしていた。私は三人をギュッと抱きしめた。
「――――辛かったね。ごめんね。あなた達が自分の信じるもののために戦えるようになるまで――――私たちが戦うから。待ってる。また再びここで会える日を。」
『――――うん。』
私の大事な子供たちは、小さく頷いて私に身体を寄せた。