第69章 葛藤
「――――ナナさん!」
「アルミン。今日は楽しめた?」
午後、アルミンが私を呼び止めてくれた。
「はい!とても。あの、言っていた話って――――――。」
「ああそうだね。……ごめんグンタ。込み入った話になるから、ここまでで大丈夫。ありがとう。」
「――――大丈夫ですか?もしナナさんになんかあったら俺―――――兵長に殺されるんで……怖いんすけど。」
「大丈夫だよ、エレンもミカサもアルミンもいるし。また一人になりそうな時は、誰かにくっついてるから。」
私が笑うと、グンタもふっと笑った。
「わかりました。じゃあ俺はこれで。」
グンタが背を向けてその場を去ると、エレンが少し不機嫌そうに口を開いた。
「――――なんでナナになんかあったら兵長って人が怒るんだよ。」
「えっ。」
思いもよらない言葉に驚く。
「――――ナナがその兵長って人の恋人だからに決まってるでしょエレン。」
「はっ?!そうなのかよナナ!!」
ミカサの言葉にエレンが過剰に反応する。
「え、いや……厳密に言うと違うんだけど……。」
まさか団長の恋人だなんて言ったら、また話がややこしくなってしまう気がして、私は曖昧に誤魔化した。
「ナナだって年頃で、しかもこんな綺麗なんだよ。いつまでもエレンだけのお姉さんでいると思ったら大間違い。」
「ミ、ミカサ!!そこはもういいから……!」
アルミンが空気を読んで止めに入るも、エレンはなにやらショックを受けていた。幼い憧れでもあったのだろうか……私には到底可愛い弟にしか思えないけれど、成長過程で親しくしていた異性に惹かれるのは―――――私も身をもって知っているから。
でもいつか目が覚める。
エレンの隣には、いつもエレンのことだけを見て支えてくれているミカサがいることに。
――――そんな未来を、私も見たいな。
私は微笑んでミカサの頭を撫でた。
「……ナナ?どうしたの……?」
「………ううん。」
「――――それで、話って何でしたか?ナナさん。」
アルミンが本題に戻した。チラリと周りを伺っても、もう夕暮れ時に近く催しも終盤で、人の行き来も少ない。ここで話しても大丈夫そうだ。