第69章 葛藤
それから歩き回る私にずっとグンタは付き合ってくれた。王都から資金援助と屋台の出店をしてくれた方々への御礼や、リーブスさんへの御礼とそれぞれの関係各所の皆さんとエルヴィン団長の顔を繋ぐことも。
エルヴィン団長の外交術はさすがで、どの資産家・商家の方々もエルヴィン団長と話をすると途端にその魅力と漲る希望・力に惹きつけられてしまうようだ。
これからの資金援助もいくつか目途が立ちそうな様子で、私もホッと胸を撫で下ろした。
「――――あれ、あんなところで何してんだ……?」
グンタが呟いた方向に目をやると、訓練場から少し離れて兵舎の方へと歩いていく2人の男の子の姿があった。
―――――あれは確か、南部訓練兵団にいた―――――――
「何か探してますか……?」
私が声をかけると、一瞬黒髪の背が高い男の子が肩をびく、と震わせた。もう一人の身体の大きな金髪で短髪、鋭い目をした男の子が振り返った。
なんとなくピリッと空気が張ったことを感じとったのか、グンタは私を庇うように前にすっと入ってくれる。
「そっちは兵舎しかないので、立ち入り禁止です。」
「――――ああ、すみません。迷ってしまいました。」
「――――……南部訓練兵団の……エレンたちと一緒にいましたよね。」
「……勧誘に来てた、綺麗なオネエサンですよね。」
「ナナと言います。」
「――――ナナさん。すみません間違ってこんなところに迷い込んで。すぐ帰ります。」
金髪の男の子は、もう一人の黒髪の男の子に行くぞ、と合図し、連れだって去っていった。
「――――ナナさん、変質者だったらどうすんすか。俺が声かけるんで、果敢に攻めるの止めて下さいよ。冷や冷やする。」
「ご、ごめんね……!」
グンタに釘を刺されながら、2人の男の子の背中を見送った。