第69章 葛藤
「――――そう言えば、アイビーはどんな作戦を考えたんですか?」
「――――………。」
「??」
「教えねぇ。」
「なんですかそれ。教えてくれたって――――――」
そう言いかけた時、遠くから市民の興奮する声が聞こえた。
『リヴァイ兵士長だ!!!!』
『うわ本物だ!!握手してください!!』
『団長の副官もいるぞ!』
あっという間にリヴァイ兵士長に人だかりができてしまった。そうだった………とんでもなく人気者なんだった、この人は。
「――――ちっ、人だかりなんてできたら、変質者まで集めちまう。俺は行く。―――――おいグンタ!」
「……はい!」
リヴァイ兵士長は立体機動体験のところで市民と話をするグンタを呼んだ。グンタはすぐにリヴァイ兵士長のところに駆けつけた。
「俺は行く。ナナから離れるな。変質者が紛れ込んでいる可能性がある。守れ。」
「はい。」
「グンタ、ごめんね。宜しくお願いします。」
リヴァイ兵士長は人だかりを避けるようにしてその場を去った。
「変質者なんて物騒ですね。なにか心当たりが?」
グンタは私を見て怪訝そうに眉を顰めた。
「そうなの、背筋が凍るような手紙が来て……。」
「兵舎の中にいたほうがいいんじゃないですか?」
「――――翼の日を言い出したのは私だから、ちゃんと見届けたいの。手を煩わせてごめんなさい。でも、付き合って欲しい。」
私はぺこりとグンタに頭を下げた。
「いえ、全然問題ないです。それに俺は――――、ちょっと嬉しいんです。」
「??」
「リヴァイ兵長がナナさんを俺に預けるのが。――――信頼されてるんだと思うと。」
「――――リヴァイ兵士長はグンタのこと、一般兵のあの時から一目置いていたもの。信頼してないはずがないよ。」
私が笑うと、グンタは少し照れたように指で自分のその鼻先を拭った。