第69章 葛藤
「――――ナナさんは、リヴァイ兵士長のお嫁さんになるんですか……?」
「えっ。」
あまりに純粋でストレートな質問に、私は固まってしまった。
どうしよう、夢を壊すわけにもいかないけれど……まさか肯定するわけにも……。
そう思っていると、いつも鋭いはずのその声に少しの柔らかさを含んで、私の横からアイビーへ返答が飛んだ。
「――――そうしたいのはやまやまなんだがな。ナナが『はい』と言わなくて困ってる。どうしたらいいと思う、アイビー。」
「―――――リヴァイ兵士長……っ……!」
思わず姿勢を正してしまう。アイビーはまさかの憧れのその人が目の前に現れて、まるで夢の中にでもいるように瞳を輝かして震えていた。
「なあ、教えてくれアイビー。どうしたら俺はナナをお嫁さんにできるだろうな?」
「えっ。」
「え、えっとね………!」
まさかリヴァイ兵士長が子供に付き合うとは思ってもいなくて、驚いた。
憧れのリヴァイ兵士長に頼られたアイビーは心底嬉しそうに頬を染めて、リヴァイさんに耳打ちしたいと、ひそひそ話をするように口元に手をやった。リヴァイ兵士長はかがんでそれに応じた。
「―――あのね、―――………。」
「―――――なるほど、いい案だ。試してみよう。」
リヴァイ兵士長は優しくそう言うと、アイビーの頭を優しく撫でた。
「――――助かった。じゃあな、アイビー。元気でいろよ。」
「はいっ……!………リヴァイ兵士長のこともナナさんのことも、だいすきです……!」
そういって小さな兵士は背を向けて、彼女を笑顔で迎え入れる母の元に帰っていった。
「――――びっくり………しました………。」
「あ?」
「リヴァイ兵士長があんなに子供に優しいなんて。」
「――――………俺は結構子供には優しい。」
「私が子供の頃は結構怖かったですよ。」
「――――……あの頃は俺もガキだったからな。」
そんななんでもないやりとりをして、ふっと笑う。幸せな瞬間だ。