第7章 調査兵団
「私……ずっと医者になるために朝から晩まで勉強していて……人との関わり方がわからないので……失礼に当たったなら、ごめんなさい。でも、あなたが命をかけて調査兵団として戦っていることはすごく理解できました。……だから私も……私なりの覚悟を持ってここにいると、知って欲しかったのです。」
「……………。」
「ナナ、ちょっと冷やすもの、取りに行こうか。」
微妙な空気を察してか、アルルさんが私を部屋から連れ出してくれた。氷を取りに食堂に向かうと、まだ話し込んでいたのか、テーブルを囲んでいた幹部の四人がこちらに気付いた。
「ナナ?!どうしたの?!」
ハンジさんが驚いた顔でこちらを見た。心配しないで、という思いで、ヘラッと笑って見せる。ハンジさんの隣のリヴァイ兵長が、なにやら不機嫌な顔をしているのが横目で見てとれた。
「アルル、これはどうしたんだ?」
エルヴィン団長がアルルさんに問う。バツが悪そうに、アルルさんは目を泳がせながら答えた。
「え~っとですね……その………なんというか……洗礼?みたいな……あはは……。」
「あ?」
声色でわかる。リヴァイ兵士長、物凄く怒ってる。アルルさんがビクッと肩を震わせたのがわかり、私は慌てて補足した。
「私が同室の方を怒らせました。この傷は……ただの意見の相違の結果です。ご心配は無用です。」
「ああ………リンファか…………。」
エルヴィン団長が、心当たりがあるとばかりに顎に手を当てて目線を上に上げた。
「………同室の親友を……前回の壁外調査で亡くしたばかりだ。」
そうか……彼女の苛立ちは、それもあったのかもしれない。共に苦労してきた友が、無残に死んでいく姿を見た彼女にとって、訓練もせずに入団するという私は、どんなに甘えた人間に見えただろう。
「……そうでしたか。まずはリンファさんに認めてもらえるよう……精進致します。」
アルルさんが持って来てくれた氷を受け取り、私は幹部の皆さんに一礼をしてその場を去った。