第69章 葛藤
「ミカサ、アルミンも。来てくれたんだね!」
「――――エレン、いい加減にして。ナナも困ってる。」
ミカサはエレンを掴んで私から引き離した。
「ナナさん、こないだは話の途中ですみませんでした!……それにしても調査兵団の訓練場に入れるなんて……素敵な催しですね。」
アルミンは興味深そうに辺りを見回して、その目を輝かしていた。
「そう言ってくれて嬉しい!そうなの、あの……一通り楽しんでからで構わないから、アルミンに話したいことがあって。帰る前には声をかけてくれる?」
「はい!」
エレンたちの他にも、南部の訓練兵団で見かけた子達を数名見かけた。良かった、勧誘したうえでこの催しにも来てくれたとなれば、調査兵団を選んでくれる確率も少しは高くなる。
周りを見回してふっと笑みを零した時、小さく可愛い声が私を呼んだ。
「……ナナさん?」
「はい?」
振り向いた先には誰もいない。目線を下げると、そこには7~8歳だろうか。小さな女の子が、イルゼやペトラとその同期たちが子供仕様に仕立ててくれた調査兵団のジャケットを嬉しそうに羽織って、私を見上げていた。
なんて可愛いんだろう。
私は膝を折って小さな兵士に目線を合わせた。
「なんでしょう?小さな兵士さん?」
「クロルバ区から来ました。アイビーと言います。」
「アイビー。素敵な名前だね。」
その女の子のつやつやと輝く細い金髪を撫でる。
「調査兵団が壁外調査に行くの、見てました……!あの、ナナさんがとてもきれいで……リヴァイ兵士長の横に並んでいるのが、すごくカッコよくて……!」
嬉しかった。
ファンレターの中には、小さな子供が書いてくれたようなものもあったけれど、まさかこうして会いに来てくれる子がいるなんて。
「ありがとう。」