第69章 葛藤
12月24日――――――
翼の日は、エルヴィン団長の瞳のように蒼天に晴れ渡っていた。サッシュさんたちが工夫を凝らして作ってくれた門の装飾や立て看板。そして、リーブス商会からも花や装飾品が沢山届いた。
医療班の子達が絵を描いて刷った楽しそうなチラシを手に握りしめて、開門の瞬間を子供たちが心待ちにしている。その目を輝かさせて。
「時間だな!ナナ、門を開くぞ!」
「はい!!」
サッシュさんとリンファに合図を送ると、いつも重厚に閉じられた調査兵団兵舎訓練場の門が開いた。
「――――ようこそ、調査兵団へ!!」
有志で参加してくれた兵士は、ゆうに70人を超えていた。みんなが少しずつ知恵を出し合い、時間をかけて作り上げてきた。
大人も子供も、沢山のみなさんがワクワクした表情で屋台を楽しんだり、立体機動を体験してみたり、憧れの兵士を見つけて話をしたりしていた。
「―――――ナナ!!!!!」
各場所が問題なく運営できているかうろうろと歩き回る私を、遠くから一際大きく呼ぶ声が聞こえた。振り返るとそこには、目を輝かしたエレンがいる。
「エレン!」
エレンはいつかのように猛スピードで駆けてくると、ぶわっと私に抱きつこうとしたけれど―――――隣にいたミケさんに、その首根っこを掴まれてまるで子猫のように宙に浮いた。
「うわっっ?!?!」
「不審者――――……。」
「ミケさん!違います!!この子は――――私の大事な子で――――。」
「そうか。」
私が慌ててミケさんを制すると、そっとエレンは解放された。と、同時にやはり私に強く抱きついてきた。
「――――――会いたかった、ナナ。」
「うん。私も。」
可愛いエレンをぎゅっと抱きしめて、その頭を撫でる。エレンの後ろから、いつものようにミカサとアルミンがついてくるのが見えた。