第68章 商会
「考えなしで挑めるほど――――――今すぐ行こうと言えるほど軽いものじゃないんです。それを私たちの団長はなるべく早く実現するために、昼夜問わず必死に考えている。だから、私たちはその機が整うまでの間に出来ることをしようとしています。市民が調査兵団を受け入れ、支持をしてくれれば―――――本当の奪還作戦を実現させる糧になる。」
「……可愛い顔して随分生意気な口を聞くじゃねぇか。」
「――――あなたに出来ることを頼んでいます。力を貸してください。トロスト区の皆さんのことを思っているなら。」
リーブスさんは目を逸らさず、じっと私を睨み続けた。
一瞬たりとも目を逸らさずそれに応じると、リーブスさんはソファにもたれて上機嫌に笑いだした。
「はははっ、悪くねぇ啖呵だ。ナナと言ったか?気に入った。いいだろう、任せておけよ。何店舗出せる場所がある?」
「――――ありがとうございます、10店程です。王都の商家からも集めてみるつもりです。」
「王都か…まぁ奴らを取り込むのは賛成だ。金も物資も持ってやがる。だが俺達にも意地がある。7割程度は埋めてやるよ。おいフレーゲル!早速目ぼしい店挙げろ!」
「あっ、ああ!」
リーブスさんの一声で、フレーゲルといった息子はバタバタと準備の為に部屋を出て行った。
「リーブスさん。ありがとうございます。今後は手紙でやりとりを?」
「ああそうだな。」
リーブスさんに手を出すと、ニッと笑って固く握手を結んだ。
「――――……。」
「何か?」
リーブスさんは握手を交わした瞬間、驚いたような表情で一瞬静止した。
「――――いや。なぁあんたいい女だな。俺の息子の嫁にならないか?」
「えっ。」
思わぬ言葉に目を丸くしてしまった。
「それなりに贅沢できるぜ?」
「――――いえ、私は―――――愛する人の側で、死ぬまで戦うと心臓を捧げた身ですので。」
目を伏せて応えると、ミケさんもまた小さく目を伏せた。
「―――――そうか、残念だ。じゃあまあこれから宜しく頼む。」
「はい!」
何とか交渉も上手く行って、私とミケさんはリーブス商会を後にした。