第68章 商会
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「あ、あれっ??さっきの……もう帰ったのかよ?」
部屋に戻ってきたフレーゲルが辺りを見回して、小さく肩を落とした。
「ああ、お前がいねぇ間に――――お前の嫁にどうかって聞いてみてやったんだが。」
「勝手になにやってんだよ……!」
「お前も好みだったろうが。俺とお前は女の趣味が似てるからな。」
「―――――……で、何て………?」
フレーゲルはそのいきさつを知りたくてチラッと父親の方を見た。
「―――――愛する人の側で死ぬまで戦う、とよ。小さくて白い手が―――――傷だらけでな。年頃の女の手じゃないみたいだった。」
「俺いない間にフラれたのか……。」
「はははっ、まぁ次だ次!女なんていくらでもいるんだ!」
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リーブス商会を出て数歩歩いたところで、ミケさんが話しかけてくれた。
「よくやったな、見事だった。」
「いえ、ミケさんが見守ってくださっていたので勇気が出ました。」
「――――とはいえ、壁外調査にかかる金額が――――……。」
「……バレました?だいぶ盛りました。………ナイショです。」
私は悪戯に人差し指を口の前に立てて、ニッと笑った。
「――――エルヴィンに似て来たな、ナナ。」
「それは、褒め言葉として頂いておきます。」
お互いにふふ、と小さく笑ってトロスト区を発った。
こうして、リーブス商会の全面協力のもとで翼の日の準備は着々と進められていった。