第68章 商会
――――――――――――――――――――――
「――――――失礼します。」
団長補佐の執務にあたる時間に団長室を訪れる。
すると、エルヴィン団長は何やら本棚に収納されている沢山の書類を開け広げていた。
「何か探し物ですか……?手伝いましょうか。」
「いや、大丈夫だ。もう終わった。」
「ではコーヒーを淹れますね。」
書類を片付け終えたエルヴィン団長の傍らにコーヒーを置くと、コンコンと扉がノックされた。
「俺だ。」
「ああ、どうぞ。」
リヴァイ兵士長が年明けの壁外調査のための班編成案を持ってやって来た。2人が話し始めたのを見て、リヴァイ兵士長の分の紅茶を淹れた。
「ああ、悪ぃな。」
「いえ。」
相変わらず2人が話しているところを見るのが、私は好きだ。例えばこのまま私がいなくなっても―――――魂としてこの2人の側に残って、行く末を見ていたいと思うほど。
あまりに見つめるとまた気付かれてしまうと思い目を逸らして執務にあたる。
ソファに座って翼の日の準備について進捗を書き出して整理していると、思いがけず話しかけてきたのはリヴァイ兵士長の方からだった。
「――――おいナナ。」
「は、はい!」
慌てて顔を上げると、リヴァイ兵士長は私の横に少しの間を開けて座った。
「次の王都招集の時に商家への商談も含むんだろ。」
「はい。」
「その前に、ここから最も近いトロスト区のリーブス商会を押さえておいた方がいい。」
「……リーブス……商会……?」
リヴァイ兵士長が不本意そうにしながらも、翼の日に協力しようとしてくれているのは知っていた。だけど、思わず具体的な指示があったのでとても驚いた。