第68章 商会
「――――随分具体的な指示だなリヴァイ。……確かに最寄りの一番大きな街であるトロスト区からは参加者も多く来るだろうし……距離が近いからこそ、揉めると後々面倒ではあるな。」
「ああ。リーブス商会のトップはなかなか影響力があるそうだ。王都の商家に自分のシマに入り込まれることを良く思わねぇだろう、そうなれば無駄に敵を作る羽目になる。先にリーブスを押さえておけ。」
「わ、わかりました……!」
「その情報は確かな筋か?」
「ああ、信頼に足る奴だ。」
「ではなるべく早くリーブス商会にアポイントをとって、まずトロスト区内の商家から誘致をかけます。」
リヴァイ兵士長が一緒に考えてくれることが嬉しくて、思わず笑顔になる。
「………わかってると思うが、一人で行くなよ。」
「――――そうだぞナナ、ミケにでも頼むとするか。私から声をかけてみよう。」
「はい、ありがとうございます。」
エルヴィン団長の提案に御礼を述べて微笑みを返した。
そしてミケさんは快く承諾してくださり、2人でトロスト区のリーブス商会に赴くことになった。
ミケさんのことはもちろん大好きだが、2人で出かけることなんて今までに無かったから、少し緊張してしまう。
朝に兵舎を出立して馬を走らせ、トロスト区に向かった。
「………ナナは前を走れ。俺の視界に常に入っていないと安心できない。」
「はい、ありがとうございます……宜しくお願いします。」
しばらく馬を走らせ、河原で休憩を挟んだ。馬に水を与えてその身体を撫でる。ミケさんもまた、無言で側にたたずんでくれていた。しばらく静かな時間が流れると、ミケさんの方から口を開いた。
「――――ナナは、俺と2人でいることが苦痛じゃないのか?」
「え?全く苦痛なんて微塵もないです。むしろ居心地がいいですよ。」
なんでそんなことを聞くんだろうと不思議に思いつつミケさんを見つめると、スン、と鼻を鳴らして少し笑んだ。