第68章 商会
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ジルからの手紙を受けて、日が沈むころに兵舎の入り口で奴を待つ。
「おお?なんか………賑やかだな、催しでもやるのか?」
「――――遅ぇよ、まずは遅れてきたことを詫びろ。」
俺は腕を組んだままじろりと奴を睨み付けるが、ジルは悪びれるようすもなく軽い口調で詫びた。
「いちいち怖えぇんだよなぁ。悪かったよ。」
「――――それで?今日のネタはなんだ。」
「――――中央憲兵絡みの黒いネタを2つ。兵舎に半狂乱で乗り込んできた黒髪の女の話。もう一つは、中央憲兵のなれの果ての話。」
「ちっ………胸糞わりぃ話ばっかりだな。」
「なんだよ、面白可笑しい話なんか持って来たって買ってくれねぇだろ?――――あ、そうだ。さっきも聞いたが、この賑わいで何か催しをやる気なのか?」
「――――ああ、1日解放して屋台やら出店を出して市民との交流の場にするらしい。」
「へぇ!いいじゃねぇか!なら、情報を2つで銀貨3枚。それで買ってくれるなら、その催しにほんの少し役立つかもしれねぇ、押さえておいたほうがいい商売人の話をおまけしてやろうか?」
どれもこれも確実に俺達に有益なのかはわからねぇが、こいつの話の持って行き方はなかなか感心する。
「――――お前も十分商売人だ。」
俺はジルの手に銀貨を置いた。
「毎度あり!」
「ここで話すのもなんだ。来い。」
ジルを人気の無い河原に連れて行き、そこで詳しく話を聞いた。