第67章 下準備 ※
「――――不特定多数の人間を入れるのは危険だろう。なぜ許可した、エルヴィン。」
「――――資金難に有効な策だと思った。そしてなにより今この兵団は空気が悪い。風を吹き込むにはいい機会だと思ったんだが?それに―――――公にしてしまえば、あの子を呼んで話も聞けるだろう。南方訓練兵団にはその日を調整日にするよう掛け合い済みだ。」
「ああ!!なんだっけ……アルレルトのことだね!」
ハンジが目を輝かす。外の世界への重要な足掛かりというのは分かる、が、それよりも危険に晒したくねぇものが俺にはある。
「―――――……まだナナを反乱分子としようとしている輩は、諦めてねえぞ。おそらくな。」
「―――……ああ、そうだな。だが恐らくこの企画をやろうとやるまいと同じだ。すでに不穏な動きをすれば即刻拘束できるように、監視はついているだろうからな。」
「気付いていたのか。―――――ちっ、嫌な視線だ。」
「サッシュとリンファは、アーチから何か聞き出せたのかな?何か聞いてる?エルヴィン。」
「――――いや、連絡をとっても返事は全くないそうだ。まぁ探りを入れていることを見せるだけで、私たちが警戒していることは伝わるはずだ。無理にナナを拉致したり、ありもしない証拠をでっちあげたりするほどの強行策は打てないさ。」
「――――………。」
「なにより、ナナだからやれることをやらせてみたくなった。」
エルヴィンが窓からナナを柔らかい眼差しで見つめる。ハンジは、そのエルヴィンをまた嬉しそうに見つめていた。
「―――――ナナのこと、信じてるんだね。」
「ああ。――――信じて貰えるかわからないが、ハンジもリヴァイもミケも―――――信頼しているよ。」
――――確かに、以前よりは幾分マシだ。てめぇの頭の中を少しは口に出すようになった。