第67章 下準備 ※
「――――面白いじゃないか。やってみよう。」
「本当に?!」
「ああ。―――――市民と交流して市民の信頼で商家への融資を促す―――――俺には到底思いもつかないことだ。しかも、毎年の恒例にできればその規模は年々大きくできる。未来を担う子供たちに調査兵団の存在意義を知ってもらえることも――――とても大きい。」
「うん。何よりこの混沌とした今、1日くらい――――……みんなが笑顔になれる日があったっていいでしょう?」
「―――――その通りだ。――――そんなこと、考えたこともなかったよ。君はすごいな、ナナ。」
「―――――嬉しい!!!!」
私は自分の提案を受け入れて貰えたことと、尊敬するエルヴィン団長から認めてもらえたことが嬉しくて、ガバッとエルヴィンの首に抱きついた。
「開催は12月と言ったか?」
「うん、準備も含めて―――――それくらいが妥当かなって。次の王都招集の時に目ぼしい商家に商談に行きたい。それと並行して、この訓練場で出来そうな体験会や出し物を検討していく。あ、すぐに屋台の出店が場所的にどれくらい可能か見ておかなきゃ……。あとは費用を試算してみて、出店料を決めて……。待って、メモをとるね。」
私がそう言うと、エルヴィンは机から紙とペンを渡してくれた。
「――――無理に利益を出そうとしなくていいよ。相殺できるくらいか……いや、やはりほんの少しは利益も見込もう。調整日に協力してくれるみんなへ、美味しい酒くらいは振る舞えるように。」
「そうだね、とても素敵……!」
エルヴィンの膝に座ったまま、どんどんと準備すべきものや構想を書きなぐっていく。なんてワクワクするんだろう。
たくさんの人が、笑顔になって―――――私の愛する人たちの頑張りを労って、応援して、その輪が広がる機会を作れるなら、こんなに嬉しいことはない。