第67章 下準備 ※
「調査兵団の訓練場を1日解放して、応援してくれている市民や子供たちを招待するの。立体機動を体験させたり、憧れの兵士と話をする機会にして―――――商人に声をかけて、前にエルヴィンと歩いたあの王都の街のような、小さな屋台をいくつか出せばいい。商人たちは現場で売り上げも上げられるし、そこで調査兵団への資金提供をしてくれていることを明示すれば、市民からの商家への信頼が生まれて大きな宣伝になる。協賛したいという商家はきっと多いはず。」
次から次へとワクワクする構想が生まれる。私はきっと目を輝かしていたと思う。
「―――――なかなか面白い発想だが……ザックレー総統と……何より王政がYesと言わなければ実現はできないぞ?どう説得する?」
エルヴィンが顎に手を添えて、私に問う。受け止めて、実現に向けて思考してくれているのが嬉しい。
「――――王政の主催という見せ方にすれば、市民の支持と好感度を得られる機会にできるよ。それは王政側にも大きな利点になるはず。しかも費用も、出費になり得るチラシや装飾類にかかる費用くらいは、屋台の出店料から差し引き0くらいにできると思う。対応する兵士は私が呼びかける。調整日でも付き合ってくれる人たちが、きっといてくれる。費用をかけずに支持と好感度も得られる活動にNoとは言わないよ、彼らは。それに―――――リヴァイ兵士長も言ってた。有能な指揮官が壁の外で本領を発揮するより、内側でイイコにしてるほうが彼らは喜ぶでしょう?」
エルヴィンは目を見開いて、驚きの表情で固まっていた。なにか甘い想定や、抜けがあったのだろうか……とても現実的ではないと思われているのだろうか、と少し不安になる。
けれど、その不安は一瞬にして吹き飛ばされた。それくらいの笑顔で、エルヴィンは笑ってくれた。