第67章 下準備 ※
「十分すぎるほどだぞ?医療班を率いて育て、団長補佐としての雑務もこなして……ハンジの研究の手伝いも時々しているだろう。それに――――俺を、こうして癒してくれる。」
「――――癒すなんて、私はなにもしてない……。」
「君はいてくれるだけでいい。」
いてくれるだけでいい、共に歩んでくれればいい。そう言ってくれるのはとても嬉しい。でももっと求めて欲しい。
あなたと同じ目線で物事を見るには、私にはまだまだ足りないものが多すぎるから。
そこにいればいいという言葉に満足できない私は、つくづくお母様の娘なんだと思い知る。私にできることを、やれることをやりたい。そんな思いが募る。
「―――――エルヴィンは、私に甘すぎる………。」
小さく恨み言を零して、また思考を巡らせる。
「惚れた女性を甘やかしたいのは男の性だよ。」
例えばロイならどうする?お父様なら―――――
資金を出す目先の相手だけじゃなく、その相手のその先を先回りして掴む。誰もが利益になる、そんな事ができないだろうか。
「――――……ねぇエルヴィン。」
「ん?」
「次の壁外調査はいつ……?」
「早くて2月だ。」
「それまではもう出ない?」
「ああ、資金難だ。」
エルヴィンはそう言って笑った。
「――――準備期間を考えたら……12月………。」
「ん?」
「――――壁外調査に出ない代わりに、住民と交流するための機会を設けるのはどうかな。」
私はエルヴィンの首元から離れて、その目を見て構想を話す。
「調査兵団の資金源は、貴族や富裕層……でも、直接融資するほどの大金がなくても、熱い気持ちを持って調査兵団を支持して応援してくれている市民が沢山いる。この人たちは、富裕層の――――特に商いをしている商家にとっては、物を買ってもらうべき“お客さん”でしょう?」
「―――――………。」