第67章 下準備 ※
以前のナナなら、これ以上先まで言わないと納得しなかっただろう。だが、私の言わんとしていることを理解したようだ。
「――――………。」
ナナはあからさまにしゅんとして、肩を落とした。
「――――分かってくれ。」
「………はい……。」
なんとか納得しようとしている、少し拗ねた顔だ。唇を少し尖らせていた。
「部屋に持ち帰って、読んでもいいですか?」
「構わないよ。――――だがおかしな内容のものがあったりしたら、すぐに報告しなさい。」
「――――おかしな内容……?」
「脅迫めいたものや―――――異常なまでの執着を感じるもの……とかかな。」
「はい……。ちなみに、――――他の方々に宛てたものは、どのくらいあるのですか?後で皆さんに届けておきます。」
「ああ、じゃあこれを頼む。」
数十通の手紙を渡すと、なぜかナナはとても嬉しそうに微笑んだ。
「どうした?」
「――――みんなの頑張りを、姿を――――応援してくれている人もこんなにいるんだと思うと、とても―――――嬉しくて。」
そんな些細な事で顔を綻ばせて手紙の束を胸に抱く。そんな彼女を見て、私もまた心が和んだ。