第66章 垂訓
「――――……エルヴィン団長。」
「なんだ、リンファ。」
「――――それは……その意図は、アーチを……こちら側に引き込んで――――……諜報員のように使うおつもりですか………!」
「………リンファ…!お前、何言って………!」
「―――――だとしたら?」
エルヴィン団長の冷たい視線がリンファに送られる。私は、息を飲んだ。
「――――あたしがあの子を十分すぎるほど傷つけました………!これ以上………これ以上惑わせるようなことを、傷付けるようなことを……したく………ありません………!」
「――――そうか。」
エルヴィン団長はリンファの言葉を受け止めた。だが、また鋭い目をして2人を見つめた。
「――――だが、君たちがアーチを守りたいように、私は君たちを含むこの調査兵団を守るのが仕事だ。調査兵団にとって、一度すでに不利益を齎したアーチや中央憲兵は厳重に注意をするべき相手だ。残酷なようだが―――――私は君たちの想いを知っても………命令として下す。アーチを引き込むつもりで連絡を取れ。拒否は許さない。」
その圧倒的な強制力と説得力に2人はびく、と身体を一瞬震わせて、小さく承諾した。
「―――――はい、わかりました。」
「――――……はい………。」
「――――ご苦労だった。下がっていい。ゆっくり休みなさい。」
エルヴィン団長がそう告げると、2人は団長室を後にした。