第66章 垂訓
「―――――リヴァイ兵士長?どうか、されましたか?」
「―――――なんでもねぇ。」
そう言って、一通の封書だけを引き抜いて胸ポケットにしまった。
「おや、行ってもいいと思える案件があったのか?」
「―――――いや、別件だが約束を思い出した。」
リヴァイ兵士長が興味を持つような女性が、いたんだろうか。
―――――だからなんだ、私が口を出すべきことでも、気にするようなことでもない。
雑念を振り払って、エルヴィン団長の机の上の山のような資料の整理を続けた。
―――――視線を感じてリヴァイ兵士長の方をちらっと見ると、目が合った途端、フイッとその目は逸らされた。
「――――…………?」
その日の夕方、サッシュさんとリンファが兵舎に戻った。
すぐに団長室に報告に来たけれど、その報告は思わしくないものだった。
「―――――解決はできなかったと。」
「―――――……はい、すみません………。」
サッシュさんとリンファが申し訳なさそうに、気まずそうに俯いた。
「――――いや、もとより……中央憲兵に一度所属して、抜けさせる方が難しいだろうなとは思っていた。」
「――――はい、弟が直接口にしたわけではないですが………ひどく、中央憲兵という組織を怖がっていたように見えました。」
「………だろうな。」
「――――………。」
辛い沈黙が流れる。
エルヴィン団長は少し考えた後、サッシュさんを責めるわけでもなく静かに告げた。
「これからも連絡はとり続けろ。弟がたとえ拒否したとしても。試みろ。サッシュとリンファ、2人で。ただし―――――向こうがこちらの情報を聞き出そうとしてきたら必ず報告しろ。」
「――――はい。」
エルヴィン団長の言葉を少し咀嚼した後に、リンファが顔を上げた。