第66章 垂訓
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「―――――参ったな。」
「はい?」
ある日団長室で、珍しくエルヴィン団長が弱気な言葉を口にした。
「金がない。」
「えっ。」
「――――だろうな、前回の壁外調査の結果を受けて、資金提供をしていた豚共の一部が金を出し惜しむようになりやがったからな。」
「……そうなんですね……。」
偶然訓練の班編成の話をしに来ていたリヴァイ兵士長が、いつもの調子で冷静に言う。
「――――もうこうなったら―――――リヴァイの人気で荒稼ぐしか―――――……。」
エルヴィン団長は冗談半分、本気半分な様子でリヴァイ兵士長に目を向けた。
「おい何言ってんだこのクソ七三が。」
「――――……リヴァイ兵士長で稼ぐって、どういう……ことですか……?」
その意味合いを掴めなくて、エルヴィン団長に問いかける。
「リヴァイは大人気だからな。特に貴族や富裕層の女性達にね。資金提供を餌に、リヴァイとの会食を希望する案件は数えきれない。」
その話を聞いて、夜会の時の貴族の令嬢たちのことを思い出して鳥肌が立った。
嫌だ。嫌だ。絶対に。
あんな人達の―――――リヴァイさんを珍しい物のように扱おうとする人のところに、行かせたくない。
思わず複雑な顔で、黙り込んでしまった。
「―――――話を盛るな。そこまでじゃねえだろ。」
「―――――今月と来月のお誘いだけで16件だが?私には十分な数に見える。」
エルヴィン団長が、その封書をバサッとリヴァイ兵士長にまとめて渡した。
「断れよ全部。くだらねぇ―――――……。」
パラパラとその封書に目を通しながら、一通の封書にリヴァイ兵士長が目を止めた。