第66章 垂訓
誰かと肌を合わせてベッドに潜ることが、こんなに心地よいとは思わなかった。それがずっと欲しいと願った愛しい人なら尚更だ。
サッシュの腕の中で、懺悔を口にする。
「――――ねぇサッシュ、アーチは……もう、きっとあたしたちのところに帰らない気だ。」
「………なんでだよ………。」
「『兄貴と幸せに、さよなら』って言って―――――走り去った。」
「―――――………。」
「ごめんね、説得……したくてあたし………余計な事、した………。」
「――――………いい、あいつがその気なら、いつか殺り合うその日に――――決着をつけてやればいいんだろ。」
「…………。」
「―――――明日もう一度アーチに会いに行こう。あいつがそれでも拒むなら―――――もう、俺たちはそれ以上の介入はしない。次に会う時は、敵だ。」
「――――うん………。」
翌日、もう一度中央憲兵の兵舎を訪ねた。
あたし達があまりに守衛に何度も食い下がるもんだから、アーチが兵舎からその姿を現した。
心の距離と比例するように距離を保って、アーチはあたし達をじっと見つめて、一言言い放った。
「―――――これでさよならだ。二度と、兄貴の弟として会うことはない。」
「なんでだよ……納得できるわけ、ねえだろうが!」
アーチは何も言わず、あたし達に背を向けて去った。
「――――くそっ……、次に会ったら――――――俺たちは今度こそ戦うのか―――――。」
あたしがいなければこんなことに、ならなかったのだろう。
苦しそうに拳を握りしめるサッシュの側で、あたしは自分を呪った。