第65章 脆弱
「―――――アーチのために、あたしは………どうしたらいい………?」
想い続けた彼女が呟いたその言葉は、俺の中の箍を外すのには十分過ぎた。
「――――っ……。」
その血色の良い薄い唇に自分の唇を重ねる。
小さく身体を強張らせ、一瞬の抵抗を見せたのに俺はそれを押さえつけた。
リンファに触れたい。
俺のことをもっと見て欲しい。
見たこともない表情を見たい。
聞いたことのない甘い声を聞きたい。
そうか、これが――――――欲だ。
あんなに嫌悪していたものに、俺はいとも簡単に支配された。
「―――――ぅ………っ……や、めて……!―――――んぅっ……!」
顔を背けて俺から逃れようとする。
でも、逃さない。
また唇を合わせると、観念したようにリンファは抵抗をやめた。――――――ゾクッとした。
リンファに憧れの情を抱いていたのは事実だが、可愛いと思ったのは初めてだった。
それはきっと俺がその気になれば力で支配できると思ったからだ。
――――――わかりたくもない、侮蔑していた男たちの感覚を理解できてしまう自分が死ぬほど憎い。