第6章 入団
「二つ目だ。」
エルヴィン団長が声を発すると、兵士たちは一斉に口を噤んで前を向いた。
「新しく入団した者を紹介する。ナナ、こちらへ。」
エルヴィン団長に示されるまま、横に並ぶ。大勢の兵士たちの視線に耐え、まっすぐに前を向いた。
「ナナ・エイルだ。彼女は途中入団のため、もちろん訓練兵としての経験は無い。だが、医師としての経験を持ち合わせており、その志の高さから、調査兵団の変革に一役買ってもらうこととなった。ナナ、一言挨拶を。」
「はいっ……!」
私は集まる視線に鼓動が早くなるのを感じながら、声を振り絞って伝えた。
「ナナ・エイルです!私は……自身の武器である医療を調査兵団に役立て、いつか自由に空の下で人々が生活できる未来を手に入れるため、そして自身の夢のために、入団を希望しました!!皆さんの足手まといにならないよう、精一杯頑張ります!よろしくお願いします!」
「彼女には、新しく着任したリヴァイ兵士長の専属補佐を務めながら医療班編成にも尽力してもらう。戦闘訓練の時間は医療班編成に従事し、立体機動訓練には皆と同じく参加する予定でいる。新各隊編成が発表されるまでの間は、別の訓練メニューを組むことになるが、皆、宜しく頼む。」
エルヴィン団長が私の処遇について話した途端、先ほどのそれと同じように賛否が飛び交った。
「訓練もしてない子ってこと?ありえない、何が出来るの?」
「うっわ、めちゃくちゃタイプだわ………!」
「………戦闘能力もないのに、リヴァイ兵士長専属?贔屓なんじゃないの?というか、デキてるんじゃない?」
「新聞で見たぞ!あの子……最年少で医師資格取った天才なんだぜ。」
「どうせ見た目で取り入ったんでしょ……調査兵団、甘くみんなっての。」
「医療班が充実すれば、壁外遠征での死者も減らせる日が来るのか……?」
心なしか、風当りは強い気がする。無理もない。死にもの狂いで訓練して入団した彼らにとって、訓練もせず、巨人も狩れない小娘が何の役に経つのかと思うだろう。