第65章 脆弱
「――――ありがとう麗しいお嬢さん。あなたもアーチの………友人か何かかな?」
「はい、リンファと言います。アーチの……姉のようなものです。」
「そうですか………。」
アーチはまるで昔に戻ったようにおろおろとしながら俺達のやりとりを見ていた。サネスがアーチに向かって笑顔で言う。
「―――――アーチ。いいお姉さんを持って幸せだな?」
「――――――………。」
その言葉を聞いたアーチの反応は、明らかにおかしかった。
冷や汗をかいてガタガタと小さく震えて、その震えを無理矢理止めるように大きな声を発した。
「兄貴!!!話はもう――――終わった。俺の居場所は中央憲兵だ。だから―――――もう帰ってくれ……っ……!」
「何言ってんだ、話はまだ―――――!」
「―――――帰れ。……応じないなら戦ってでもここでこの話は終わらせる。」
アーチの目の色が変わる。
こいつは普段物腰も柔らかく温和だが、対人格闘術でアーチに勝てたことはない。恐ろしく勘が良く、強い。
ただごとじゃないアーチの様子を察したのか、リンファが俺の手を引いた。
「――――やめようサッシュ。今日はもう――――。これ以上は、逆効果だ………。」
「――――……っくそ……!」
アーチはほんの少しの葛藤を残した目で俺達をちらりと見て、背中を向けた。
「話は終わりました。サネスさん、帰りましょう。」
「ああそうか。―――――ではまた。」
サネスは満足げな笑みを残して、踵を返したアーチをの後ろについて去って行った。