第65章 脆弱
「――――建前じゃなく、本音で話せよ。王がどうこうじゃねぇだろ。お前の真意はなんだ。そして何を悩んで、何をしようとしてる。」
「…………。」
「俺達にできることはなんだ。言えよ。絶対になんとかしてやる。俺はお前の―――――……兄貴だぞ。」
アーチの目を真っすぐ見つめて告げる。心を閉ざしたような曇ったその目の向こうに、語りかけたい。
「………アーチ。あたしもできることは何でもする。――――怖いんだ、優しいあんたがいつか―――――中央憲兵で任務の中で人を殺めて―――――……壊れていってしまうのが……。」
リンファの言葉に少し心を揺らされたように顔を背けて、アーチは少し言い淀んだ後に小さくそれを零した。
「――――じゃあ、リンファも兄貴も調査兵団を辞めろよ。」
「―――――は?」
「―――――え?」
思いもよらない言葉に俺もリンファも唖然とする。
「調査兵団の位置づけを知ってるか?厄介者扱いだよ。嫌程入ってくる、そんな情報は……!壁の外に希望なんて見出しちゃいけない。そんな薄すぎる希望に縋って、どれだけの兵が死んだと思ってる……?!無意味なんだよ!!それに今のあの団長は危険だ、必ず何か大きな事を企てる――――――。そこに兄貴も、リンファも巻き込まれて死んで欲しくない!!」
アーチは立ち上がって感情を吐き出すように激しくまくしたてた。はぁはぁと肩を揺らして、一点を見つめる。