第65章 脆弱
「そうだな。そして君が自分を責めるように言った“救えたかもしれない”これはまさに想像だ。事実じゃない。誰にもわからない。それを、自分のせいで死んだなんては思わないことだ。彼らも―――――ナナが必要以上に自分を責めることを、きっと悲しむ。」
「―――――はい………。」
「理解したか?」
「はい。」
「いい子だ。」
そう言って頭を撫でると、ナナは少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「――――お父さんみたいですね。」
「ん?」
「私は父に、こんな風に―――――諭すように話してもらった覚えがなくて。―――――すごく理解しました。ありがとうございます。エルヴィン団長はきっと素晴らしいお父さんになられるんでしょうね。」
ナナはなんの悪気もなく、まるで他の女性との間に子供でも設ける未来でも見ているかのように言う。観察眼も洞察力もあり、誰より頭がキレる彼女の、この突拍子もなく無神経なところが俺は結構気に入っていたりする。
「――――……他人事みたいに言われると傷つくが?」
「え?」
「――――まぁいい。理解したならそれで。さぁ、もうひと仕事だ。」
「はい!」
2人揃って伸びをして、また各々の仕事にとりかかった。