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【進撃の巨人】片翼のきみと

第65章 脆弱




「………大事な、仲間ですから。今の今まで――――彼らの死を受け入れることを避けてきていたのですが………ようやく受け入れられそうで、話してみたくなりました。」

「――――聞きたい。教えてくれ、彼らがどんな風に毎日を生きていたのか――――――知りたい。」



エルヴィン団長の言葉が嬉しかった。

エルヴィン団長はもちろん全員の事を覚えているし、把握もしている。けれど、訓練に参加する頻度も少なく執務で外出することも多いエルヴィン団長は、みんなの普段の様子を知りえない。

だから伝えたかった。

ここに記された、たった一行の名前の中に、どれほど鮮やかな思い出と、彼らの生きた日々が詰まっているのか。



私は殉職した38名の兵士について一人ずつ、彼らとの思い出の一端を話していった。

最後の1人に指をずらした時、声が震える事を止められなかった。



「………ゾーイ………。私が―――――育てた、医療班の女の子………。頑張り屋さんで、不器用だけれど優しくて――――包帯が上手く巻けなくて、私の腕で練習した時……ぐるぐるに絡まって……2人で、笑い合って――――――………。」



ぽた、ぽた、と涙が落ちる。

どうやっても、止められない。

彼女の少し垂れた目は、笑うともっと目じりが下がってとても可愛い。赤毛に近いブラウンの髪のクセに悩んでいたっけ。

ねぇゾーイ、最後にあなたは何を見た?何を思った?苦しまなかっただろうか。心の中でくり返し問いかけてももう彼女は戻って来ない。





「……ごめん、なさい……っ……!」





ゾーイをはじめ、仲間が亡くなった事実を、紙の上で知った私はそれ以上の事を考えるのを、今の今まで先延ばしにしていた。どうしても実感が沸かなかったからだ。

私がいなかったせいで班を編成しなおし、もしかしたら死なずに済んだ人がこの中にいたのかもしれない。

少しの月日が流れ、ようやくその罪の意識を受け入れることができた。

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