第64章 思惑
「――――俺、サネスさんと同じ班が良かったです。なんで、対人立体機動部隊なんて……。あの隊長は頭がイカれてます……。調査兵団への対抗組織でもなんでもない、あいつは……ケニー・アッカーマンは……自分の野望の為に俺達を使う気です。そこに……今まで死人みたいな顔をしてた奴らもなぜか呼応して―――――……俺には気味が悪く見える。」
「……対人立体機動部隊は、エリート中のエリートしか属さない。お前にぴったりじゃないか。――――それに、俺達の主な任務は――――反乱分子の排除が任務だ。お前にできるのか?市民を拷問し、陥れ、殺すことが……?」
サネスさんの目から色が無くなったように見えてゾクッとした。どれほどの死を齎してきたのだろうか。
確かに―――――俺にはそんな覚悟はない。
ナナ・オーウェンズを拘束して尋問しただけでとんでもない不快感だった。あの女が特に――――――何を考えているのか分からない、妙な怖さがあったのも、理由の一つか。
「………俺達対人立体機動部隊はいずれ……調査兵団と殺り合うことになるんですか……?」
「………さぁな。それは、調査兵団が王へどれほどの服従を見せるか、にかかっている。あの若く頭のキレる団長は………俺には大変、厄介な人物に見えるがな。」
「――――……そうですね。」
なんとかして調査兵団を弱体化し、王への服従を示させなくては。でないと―――――……俺が兄貴やリンファと――――――殺し合う未来が出来上がってしまう。
もしくは―――――やはり俺が、この中央憲兵から抜ける事が最善なのか?あの女の訴えに耳を貸すわけじゃないが、俺と殺し合えばリンファはきっと泣くだろう。
彼女を泣かせないためなら、その道もあり得る。