第64章 思惑
「ナナは悪い女なの?」
「うん、そうだよ。」
「どんな風に?」
「――――――……エルヴィン団長と共に夢を追うために生きるって決めた。」
「…………!」
本当は言いたくなかった。狡くて尻の軽い女だと、思われると思ったから。
でも―――――そんなことで例え嫌われても、私はリンファをずっと愛しているから。だから伝えると決めた。
「――――リヴァイ兵士長を捨てて、エルヴィン団長をとったんだよ?悪い女でしょう?」
「――――………びっくりした。」
リンファは嫌悪を示すでもなく、ただただ驚いた顔をしていた。
「ごめんね。つい最近まで、ずっと……ずっとどうしていいかわからなくって、悩んで悩んで―――――リンファに相談もできなかった。嫌われたらどうしようって怖くて。でも、嫌われても私はリンファを勝手にずっと好きでいればいいから。隠し事は、しないって決めたの。」
「―――――エルヴィン団長を愛してるの?」
「―――――うん。」
「―――――兵長のことは……?」
「―――――聞かないで……。」
私が困った顔をすると、リンファは察してくれたようだった。
「うん、わかった。ナナを信じてるから。たくさん悩んで、沢山苦しんで決断したんでしょ?なら私は何も言わないし―――――隠さず話してくれて、嬉しかった。」
「――――ありがとう………。………ねぇリンファ、どうしても行きたくなければ――――……断ってもいいと思うよ?なによりまず兄弟の問題でもあるんだし……。」
私の提案に、最初よりも少し明るみを取り戻した美しい横顔でリンファは答えた。
「――――ううん。ナナに聞いてもらえて吹っ切れた。行くよ。どうやってでもアーチを取り返してくる!」
「――――うん、お願い。」
それから二人で月を眺めて、他愛もない話をした。
それから数日後には、リンファとサッシュさんが王都に発つ日が決まった。