第64章 思惑
そうだ、アーチさんは知っていた。彼自身もそれがトラウマのようになっている様子だった。
「最低だよね、アーチの事を心配しなきゃいけない……どうにかして中央憲兵から抜けさせる方法を考えなきゃ、って―――――思うのに。ようやく手を伸ばして、サッシュが振り向いてくれた今――――――また、失うのが堪らなく怖い。」
「―――――失わないよ。もし、知られたとしても。絶対に。」
私が言い切ると、リンファは目を開いてゆっくり私を見た。
「サッシュさんはそんなことでリンファを嫌いになるずない。本人に聞かなくたって、鈍感な私にだってわかる。サッシュさんのリンファへの想いを、疑わないであげてほしい。」
「―――――………。」
「『思い込みで自分を追いつめちゃいけない』って、リンファが私を救ってくれたじゃない。」
リンファの肩を抱いて、ぎゅっと抱きしめる。
「――――……あんたのこともダシにして―――――……あんたと兵長を固く結んでおくことで、あたしはサッシュにあんたのことを諦めさせようとしたんだ……。あたしは、狡い。………兵長のことで――――……ナナが一生懸命悩んで決めたことなのに、責めるようなこと言って……ごめん――――――……。」
「――――……そんなこと、恋する女の子が一生懸命考えたただの作戦のうちの一つじゃない。狡いなんてことないよ。―――――私なんて、もっと悪い女なんだから。」
私がふふ、と笑うと、リンファが顔を上げて少し笑った。